私の催事で一番人気なのは味噌仕込み。
寒仕込みというには遅すぎる3月中旬、
今年はもう間に合わないかなと思ってあきらめかけていたのだけれど、
「今年はやらないの?」というありがたいリクエストをいただき、急遽開催することに。
味噌作りのプロではないので、素材の質がほぼすべてだ。
大豆、麹、塩、水。
それなりにこだわって揃えている。
(だから、1キロ2000円近い原価の高級味噌になってしまうの!)
時間をかけて浸水した大豆を圧力鍋でやわらかく煮上げて、
ペースト状に潰して、塩と麹とよく混ぜる。それだけ。
あとは「ニホンコウジカビ」(カビなんだ!)の力と、
春夏秋冬の「時間」というエネルギーが加わることで、
手前味噌の一丁上がりというわけだ。
手仕事と、ただ「待つ」ことが大切な発酵のプロセス。
その組み合わせがいいなぁって思う。
味噌作りから話が飛躍するけれど、
時間を重ねること、について思いを馳せる。
私たちは、時計の針を勝手に早めたり、巻き戻したりはできない。
(ということになっている。時空を超えられる時代もくるかもしれないけどね)
時間は、圧倒的な力で私たちをコントロールしていて、
と同時に、私たちは時間を味方につけることで、大きな物事を成し遂げることもできる。
私は、時間を味方につけるとか時間の重みを大切にするということが苦手だった。
長期的な見通しをつけることができなくて、今でも考えられるのはせいぜい3ヶ月先ぐらい。(だから仕込んだお味噌のことなんて忘れちゃうんだぜ)
ライフプランなんて立てたこともないし、ナンセンスだと思っていた。
いまこの瞬間を精一杯生きるのみ。
瞬間を積み重ねた結果、振り返ったら一人の人間の一生の軌跡がそこにあった。
それでいいじゃないか、と。
その考えは、いまも変わらないのだけれど。
だからと言って、時間を重ねることの価値を否定するのはおかしな話だ。
時間を重ねたからこそ生み出せる価値が、まちがいなくある。
熟練の技。熟成された味わい。習慣の力。
私という人間も、37年間の時間の積み重ねによってできている。
そして、
人生はそんなには長くない、
と感じることが増えてきた。
だから、これからはもっと時間を味方にして生きていってもいいんじゃないかなと思う。
時間をかけることは、未来の私への、いまの私からのプレゼント。
縛られる感じがして将来を見据えることが嫌いだったけれど、
将来の自分へのギフトだと思えば、楽しめるかもしれない。
来年美味しくいただくために味噌を仕込むように、
未来の自分が花や果実を楽しめるように種をまいておくこと。
それは、結局は、身体や生活のメンテナンスをすることだったり、
忙しくても自分の感性を磨く時間をとることだったり。
本当に大切なことを後回しにしないこと。
「今を大切に生きる」ことにほかならないのかもしれない。
そんな日々を”続ける”ことが、時間を味方にすることなんだという視点をもつと、
なんだか人生がより実り豊かなものになる気がする。
今年、一緒にお味噌を仕込んだ友人たちには、タイムカプセル的な仕掛けをひとつ。
お味噌を食べるころの自分に向けた手紙を書いてもらいました。
未来の自分に思いを馳せて、メッセージを送るって素敵なことだ。
みんな、どんなことを書いたのかしら。
ともあれ、
みんなのお味噌よ、おいしくなぁれ!
***材料メモ***
2018年3月18日仕込み
・大豆 1540g
「魂の商材屋」無化学肥料栽培大豆/北海道産/渡部信一さんの大豆
http://e-tamashii.com/SHOP/ke3622.html
・米麹 2700g
マルカワ味噌・有機白米麹 2300g
http://marukawamiso.com/item-cat/malt
宝来屋・生麹 400g
https://www.e-horaiya.co.jp/products/list.php?category_id=21
・天日塩・1kg
天日塩本舗
http://tenpijio-honpo.jp/